約 211,564 件
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/90.html
SF研&推理研内部で使用される変な言葉達です book cafe “BOOOK”(ブーク) wiki Wikipedia 青背 空き イーガン 一般人 犬 イルカ SF左翼・SF右翼 追いコン 合宿 刊行予定 教室取り 銀背 グイン・サーガ グルメストリート 黒猫現在の名前候補 工学部購買書籍店 黒板 御三家 サンリオSF文庫 三本締め 地獄の〇〇部会 スニーカー現象 生協 先生 創作 脱線 誕生日会 積読 つん読 デスノート テッドちゃん とある 「ならSFだね」 ネズミ フォーラム仙台 部室 文系書籍店・学びと成長 北京 未来日記 メーリス メタ 理薬購買書籍店 量子論 旅行 book cafe “BOOOK”(ブーク) 去年から工事が進められていた工学部新厚生会館で、2010/4/5についに完成した。 当然だが東北大生でなくても利用可能。 http //www.eng.tohoku.ac.jp/news/news.php?news=20100402135240 ref=/ またオサレな建物ですなぁ。 これまで同様ラノベが充実してるほか、妙に青背が充実しているのが特徴。創元は犠牲になったのだ…… 写真 クリックで拡大 wiki 本コンテンツ。一般には「特定記述法で簡単に編集可能なサイト」全般を現す。 SF研の内側・外側のコミュニケーションを活発にするために用意された。 しかし、肝心の内側の利用者が少ないのが目下の悩みどころ。 Wikipedia wiki形式を採用したウェブ百科事典。「知の集積」を目的とした壮大なプロジェクトであるが日本語版ではフィクションに関する記述が異常に多いのが特徴。 また、Wikipediaの内容を信じる人間が増えるにつれ、Wikipediaを舞台にした壮大な「現実の書き換え競争」が発生することがある。 これは現実世界にも影響を及ぼす可能性があり、今後の動向が注目される。 青背 ハヤカワ文庫SFのこと。背表紙が青いことからこの名が付いた。 重要なのは数では無いと思うが、多くの場合判断基準にされる。 ちなみにファンタジィは橙色、JAは白、推理は雑多。例外もあり。 空き 部室本棚に生じるスペースの事。 生じたそばから本が埋まって無くなる事で有名。 イーガン オーストラリアの送る覆面作家にして現代SF二大巨頭のひとり、グレッグ・イーガンの事。 彼の長編はいろいろな意味で鬼門だが、短編だけ読めば十分という意見もある。 ちなみに女性説、美少女説、人工知能説に脳腫瘍説と部内でもその正体については意見が分かれる。 体育会系を露骨に嫌っている、実はジブリアニメを見ているなどの意外な面があるようだ。 一般人 統計的に平均的とされる人間のこと。 それゆえに、本部室ではめったに見かけない。 犬 人類の良きパートナー。俗称K9。犬一匹いれば、たとえ他の人間が核戦争や疫病でことごとく死に絶えているという絶望的状態でも生き延びる事が出来るらしい。 川内地区ではその立地上あまり見かけない。 イルカ 地球で二番目に賢い生物。そのわりにはあっさり人間に捕まったりする。 人間側からするとパートナーとして付き合うほか機械の中枢にしてみたり肉をロボットに流用したり食べたりと用途が多い。 これらの蛮行に対し、イルカは陸地への侵攻や人類への損害賠償の機会を虎視眈々とうかがっているらしい。 SF左翼・SF右翼 政治的なものではなく、SFファンとしての立場を指す言葉。 なんでもSFだと言って楽しむのがSF左翼、ガンダムやハルヒをSFだと認めないのがSF右翼。 分かりやすいところでは、大森望がSF左翼、神林長平がSF右翼。 追いコン 進学・就職等により大学or院を去る先輩方を送るイベント 伝統的に「その人物の趣向を分析し、その趣味とはまったく正反対かつ手元に残りやすいもの」をプレゼントするのがならわし。 合宿 夏の恒例行事になりつつあったもの。今現在は行われていない。 希望者の数によっては復活するかも? 刊行予定 あてにならないものの代表格。 信憑性は出版社に依存するものの、ひどいときには5年〜10年待たされる・待ってたらどう頑張っても出せない状態になる(著者死亡・会社倒産)事もあり、そのうち「出ないのがデフォ」「出たら天変地異が起こる」と揶揄される事も。 教室取り 部会の際に使う教室をとる作業。 銀背 ペーパーバック判のハヤカワSFシリーズと新・ハヤカワ・SF・シリーズのこと。 基本的に、海外のSFはここに収められたのち、数年後青背に収録される。 この銀背にしか収録されない作品も多く、魅力的な作品群が収められているが、価格が高く、学生が手を出しづらいのが玉に瑕。 グイン・サーガ 栗本薫による日本最長(本編130巻&外伝21巻)?のファンタジー小説。ただし作者死去のため未完。 グルメストリート 大学近く川内地区の飲食店等がある通りの事。 元は「商店街」だったそうだが、現在ではかなり数が減っている 先日「まんじゅえん」がなくなったため、生協が閉まった後のメシは基本的にグルメストリートにある「さわき」一択となってしまった。 場合によっては「おふくろ弁当」orコンビニ2種のいずれか ということも。 黒猫 近年川内地区近辺で目撃される猫。トップページのアイツ。 旧サークル棟付近を徘徊し、時に部室に侵入してくる事も。 けっこう警戒心が強いはずだったが、このごろデレたようで、堂々と畳にまで上がって来るようになった。 勝手気ままな態度というか、テーブルに登ったり、膝に乗ってきたりするのだが、SF研らしく部員一堂、猫に対してはかなり甘いご様子。 おそらく名前はまだ無い。 現在の名前候補 「ピート」(「護民官ペトロニウス」から。でもありきたり) 「アービター」(上の名前の「護民官」の訳から たやすいことではない) 「アプロ」(「敵は海賊」から でも、さらにメシをゴネてきそうな予感) 「ネモ」(もう名無しでいいじゃん、ということで) 「ねこ」(吸血鬼の家で飼われている訳ではないがこう呼ぶ部員多し) あえて犬の名前にしようという案もある 工学部購買書籍店 ライトノベル、コミック等の品揃えが(需要のためもあってか)随一。 また、取り寄せ本を置くスペースがあるが、工学部生の「自重しない」ラインアップを見る事が出来る。なかなかカオス。 ...だが、最近になってSFはあまり置かなくなってしまった。残念。 最近工事により、上の「Boook」へと役割を譲った。 黒板 1・部室入って右手にあるもの。 予定が書いてあることが多い。 2・教室に各自備えられているもの。 部会中に分かりにくい概念を突発的に説明したり、人間と作品中に登場した物体・生物の比較をしたい場合に使われる。 たいていは部会前の授業の状態がそのままになっている。 御三家 ビッグスリー。いわゆる「三大~」のより和風な言い方。 SF界隈では海外の場合「ロバート・A・ハインライン」「アイザック・アシモフ」「アーサー・C・クラーク」の三人を、日本では「星新一」「小松左京」「筒井康隆」の三人を示す。 アシモフのミドルネームに「B」が入ればABCとなって最高だという人がいるとかいないとか。 ライトノベル版を作ってくれる人募集中。って絞れないか? サンリオSF文庫 キティちゃんで有名なサンリオは、1978年から1987年にかけてSFに特化した文庫レーベルを持っていた。それが伝説の絶版文庫、サンリオSF文庫である。 サンリオSF文庫はその独特なラインナップとドギツイ表紙で話題となり、一時期は早川・創元と並んでSF系の三大叢書の一角を担っていた。 現在、部室に蔵書として10点ほど存在するほか、某会長が熱心に収集中。198点あるサンリオSF文庫のうち、100点以上収集済みらしい。 三本締め SF研イベントの〆における伝統。 微妙に世間一般の「三本締め」と違うが、突っ込まないのがデフォ。 地獄の〇〇部会 〇〇には作品名や作家名などが入る。 部会のネタが尽きると誰からともなく提案される、連続で特定のネタを扱った作品で部会を行う行為。 例として、『時をかける少女』や『攻殻機動隊』(押井でない)、ディストピア、ディックなどが提案されているものの実現には至っていない。 スニーカー現象 一冊で話が綺麗に終わった(様に思われる)作品の続編が出ること。 部会で出たワードだが誰が言い出したかは不明。名前の由来はもちろん某レーベルから。 生協 悪の秘密結社だったり貧乏学生の味方だったりと役割は様々だが、 SF研部員にとっては「書籍1割引」の恩恵は大きい。 取り寄せを利用すればアマゾンよりも便利である。 先生 SF研某氏に対する敬称。 創作 作る作るといいながら永久に完成しないモノの代表。 だが、いちおう平成19年度に一冊出ている。 次はいつになるか、それは神のみぞ知る。 今年度(2017年)は3人の寄稿者を得て、無事に学祭にて頒布することが出来た。来年度以降も毎年発刊するつもりである。 脱線 部会中、話題がそれて時間を費やす事。 これをいかにもとに戻すかが腕の見せ所となる。 誕生日会 最近になって「行事」になった月一回のイベント。 積読 SF研部員/推理研部員が慢性的に抱えているもの。 コレを崩す事は非常に難しい。 そもそも作らない事自体が難しい。 人によってはさらに「積みゲー」を抱えている者もいる つん読 大学生協のつん読委員が主に執筆している読書啓発小冊子。 季刊であり、ベストセラーからマイナー本、推理からラノベまであらゆる本を紹介。 我が部も専用コーナー「G-15より愛をこめて」を持っており、推理とSFで交代執筆中。 紹介される本は担当者の趣味が多分に反映される。 デスノート 推理研が使用している情報交換用ノートの事 常にテーブルの上にあり、自由に書き込める テッドちゃん 萌えキャラ ではなくイーガンと双璧をなす現代SFの名手 中国系アメリカ人SF作家の事。 だが、両者を同一視する見方もある。 翻訳作品数はまだまだ少ないが、独特のクセになる作品を輩出する。 とある 冒頭につけるとラノベっぽくなる連体詞。 他の例としては「(人名)の(何か)」など。 ちなみにSFの場合は「原子力」「宇宙の」を冒頭に 推理の場合「の殺人」を末尾に追加するとよい、とされている。 「ならSFだね」 今は南のほうにいる先輩、探検隊氏の提唱した切り札。 どんな話題にも使用できる(らしい) ネズミ 世界全域に生息する小型のげっ歯類。 SFでは万能兵器だったり脳手術を受けたり、恵まれてるのか虐待されてるのか分からない存在。ただ、人間によって専用のガン治療薬が開発されている。 世界的に見た場合、夢と魔法の王国から来たクロネズミと小さなボールに監禁されているキイロネズミがシェアを争っている。片や帯電し、片や鍵剣を持ち出し、一触即発の状態になっている。世界の著作権市場をかけた争いの成り行きが注目される。 フォーラム仙台 姉妹館チネ・ラヴィータとともに東北大に一番近いミニシアター系映画館。 メーリスで見に行きませんか系が回る時の場所はたいていここ。 ラインナップは侮れない。色々な意味で。 部室 推理研と共有している旧サークル棟G-15のこと。 文系書籍店・学びと成長 川内南・文系キャンパスの川内メイプルパークにある購買書籍店 SFの品揃えという点ではおそらく東北大で一番。 ...需要のほどはいかに。 北京 地名の方ではなく、主にFORUS地下の「北京餃子」のこと SF/推理ともにやたらとココに行きたがる人がいる 最近は王将というライバルが出現している。が、ここの人気が衰えることはない。 未来日記 推理研の「デスノート」に対抗して先生が用意したSF研版デスノート。いうなればSF研の日記、もしくはチラ裏 本wikiにはそのWeb版がある ...同期できたらと思うがそんな技術は無い ちなみに元ネタはマンガの方ではないそうだ メーリス メーリングリストのこと。 部会の連絡から、映画・飲み会のお知らせまで幅広く利用される。 メーリスの登場で掲示板の果たしていた役割は事実上終了した。 ただしドメイン規制やなりすまし機能で簡単に無効化されてしまう脆弱性を持つ。 メタ 「ネタ・ベタ」とともにオタクが好むもの。 ただし、多用しすぎるとクドくなり効果は低くなる。 理薬購買書籍店 穴場。 SFマガジンが恒久的に置いてあったり、ハヤカワJAがいち早く入荷したりとなにかと品揃えが良い購買書籍店舗。 ただ、多くの部員に取っては距離がネックとなるだろう。 量子論 最近のSFのトレンド。ある猫が思考実験で殺されそうになったところから始まったとされる。 世界を複数作ったりワープしたり人を刻んでデータにしてみる際に重宝する。 なお、生半可な心意気で授業を受けると非常に後悔する羽目になることも付け加えておく。 旅行 かつてのSF研夏休み恒例行事。必ずネタになるスポットに行くということが特徴。 かつてはUFOや幽霊を呼んだと噂されている。 ただし最近は合宿にとって代わられつつある。
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/158.html
東北大SF研 短篇部会 『歌おう、感電するほどの喜びを!』 レイ・ブラッドベリ/伊藤典夫 著者紹介 1921年アメリカ合衆国イリノイ州ウォーキーガン生まれ。2012年没。代表作は『火星年代記』『華氏451度』『ウは宇宙船のウ』など。 SFを中心に幻想文学や怪奇小説、ファンタジー、ホラー、ミステリなども手がけ、詩人としても活躍した。SFには珍しい抒情溢れる文体から、「SFの抒情詩人」と呼ばれ、星新一や萩尾望都、スティーヴン・キングなど多くの作家に影響を与えた。 この短篇集に収録されている『キリマンジャロ・マシーン』からも分かるように、ヘミングウェイをこよなく愛し、また多大な影響を受けている。 また、作家志望者に親しく接し、助言や指導を手厚く行っていたことでも有名。ブラッドベリの手助けによって作家になったものとして、ハーラン・エリスンやリチャード・マシスンなどがいる。 この本はもともとサンリオSF文庫から1983年に「ブラッドベリは歌う」という題で刊行されていたものを、早川書房より訳者を変えて刊行したものである。まず単行本として刊行され、のちにハヤカワ文庫NVに「キリマンジャロ・マシーン」と「歌おう、感電するほどの喜びを!」の二分冊として収録された。近年ブラッドベリの作品がハヤカワ文庫SFに復帰するにあたって、再び合本として元のかたちで刊行しなおされた。 ちなみに、この作品(1969)の原題はアメリカの「自由詩の父」といわれる詩人ウォルト・ホイットマン(Walt Whitman)の同題の詩(1855)からとられている。また、アメリカのジャズ・フュージョン・グループのウェザー・リポートは、アルバムの題名として同じ題を使用している。(1972)興味のある方はこちらもどうぞ。 訳者紹介 1942年静岡県浜松市生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。代表作に『地球の長い午後』『愛はさだめ、さだめは死』『スローターハウス5』『2001年宇宙の旅』『華氏451度』『たんぽぽ娘』「人類補完機構」「危険なヴィジョン」など。 日本SF界を代表する英米翻訳家。10代にしてSFマガジンに翻訳を載せ、その後も英米のSF書誌情報や作家動向、新人作家の紹介を行った人気の連載「SFスキャナー」を続けるなど、早熟の天才として知られた。同じく日本SF界を代表する英米翻訳家の浅倉久志(あさくら ひさし、1930~2010、代表作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『高い城の男』『タイタンの妖女』『宇宙船ビーグル号』『世界の中心で愛を叫んだけもの』『たったひとつの冴えたやりかた』など)とともに初期から海外SFの普及に努め、日本SFを語る上では欠かせないひとり。一方愛の深さゆえかSFに関して色々と過激なことでも知られ、当時19歳で早稲田大学在学中にSF同人誌『宇宙塵』にて三島由紀夫のSF小説『美しい星』をメタクソにけなす文章を発表し、三島の怒りを買ったことはあまりにも有名。ほかにも早川書房最大の過ちである「覆面座談会」(1968)をSFマガジン1969年2月号誌上にて福島正実・石川喬司らとともに行い、ここでもSF御三家を筆頭に当時の人気SF作家をメタクソにけなしたため、早川書房は御三家をはじめ多くのSF作家を失うこととなった。 しかしその翻訳の腕はまさに天才と言うべきで、先に挙げた翻訳実績が全てを表している。まだ存命でSFマガジンにも翻訳を掲載している。まだまだ長生きしてぜひ翻訳を続けていただきたい。 あらすじ 母親を亡くした子供たちの前に現れたのは、「電子おばあさん」だった。ティムとトム、つまりぼくのふたりはすぐに電子おばあさんと打ち解けたが、妹のアガサはずっとどこかで心の底を見せられないままでいた。おばあさんは子供たちを正しく教育し、機械でありながら、家族全員に愛を与えてくれる理想のおばあさんだった。しかし、アガサにはその愛が気に入らなかった。かつてアガサを愛してくれた母親は、アガサを置いて永遠に旅立ってしまったからである。アガサは家を飛び出した。おばあさんと家族全員がそれを追いかけたが、アガサの目の前には車が迫っていた。いち早く家を飛び出していたおばあさんは身を挺してアガサを助けたものの、自身は車にはねられて大きく損傷したようだった。 無傷のアガサとその家族が道に座り込み、電子おばあさんとの急な別れに涙しているとき、聞きなれた声がした。顔を上げると、無傷のお祖母さんが立っていた。おばあさんは不死身だったのだ。アガサはようやくおばあさんの存在を心から受け入れることが出来た。 やがて子供たちが成長し、大学進学のため家を離れることになった時、おばあさんは“家族”のもとに帰った。そして今、別れの際の約束の通り、老人となった僕たち三人のお世話をするために、おばあさんは戻ってくるのであった。 翻訳に関する研究 この作品は、サンリオ版の中村保男訳と早川版の伊藤典夫訳のふたつの版がある。ここでは訳者が違うと文章がどう変わるか、と言う変化の楽しみと、そのふたりの翻訳のスタンスの差を比較したいと思う。 まずサンリオ版の中村保男から。中村保男の翻訳はまさに実直と言った感じがある。原文は確認できていないが、文章はより英語的で、若干堅さを感じるものの、その堅さは恐らく翻訳で意味を正確にとって原文のもつ雰囲気が落ちてしまったのではないかと考えられる。 次に早川版の伊藤典夫。こちらは中村保男とはうってかわって生き生きとした文体である。比較すると雰囲気は確かに残っている感じで、一方意味の面では伊藤自身の解釈が入ってしまっており、純粋な翻訳としては評価の分かれるところである。特に翻訳において禁じ手である文章の順番の入れ替えを行っているため、物語上ではむしろ良く作用しているものの、原文を尊重するという点ではあまり評価しにくい。 所感 なんといっても、人間よりも人間らしく家族に接してくれるおばあさんの存在が印象的。文章全体に散りばめられた、SFとしては過剰なまでの情景描写のもたらす生命感が、話の主題であるおばあさんの非人間性を際立たせている。アガサがおばあさんを受け入れられなかった理由というのも非常に非合理的で、極めて合理的に対応していたおばあさんの態度と好対照だ。 この作品はアメリカで1969年に発表された作品である。半世紀を経て、ロボットが生活に溶け込んでいる情景というのは当たり前のものになった。そして現在、日本は少子化の進行と、更なる高齢化に悩まされている。そんなところにこのおばあさんがいれば、現代日本の抱える問題は結構改善しそうだ、とつい楽観的に考えてしまう。しかし、このような楽観的な未来観を冷静に観察・批判し、作品に落とし込むのがSFの基本的な方法論のひとつである。多くの場合この作品と同じ「人間より人間的な世話係」という主題をとるならば、それが実現した社会における文明批判や未来予測を展開することだろう。 しかし、ブラッドベリはそんな野暮なことはしない。この作品のように、未来や科学技術に対して楽観的な態度をとるのがブラッドベリの作品の特徴のひとつであり、あくまである可能性のもとにおける人間を描こうというのがブラッドベリのSF的態度だ。おばあさんの存在によって動き出す人物の感情を巧みに描き出し、また老いた子供たちの姿と全く変わらないであろうおばあさんの姿とを暗示することで人間と非人間という構図が強調される。感情的にも視覚的にも対立構造を設定し、人間というものが物語の中に自然と立ち現れてくるのだ。 著者紹介にも書いたように、ブラッドベリはヘミングウェイから強く影響を受け、また星新一はブラッドベリに感化されてSFを書き始めた。しかし、これらの作家たちの作品は、影響を受けつつもそっくりそのまま同じ系統の作品という訳ではない。文体はヘミングウェイの簡潔なハードボイルドからブラッドベリの抒情的なものになり、星新一でまた無駄をそぎ落とした簡潔なものとなる。これらの作家たちの作品を比較しながら読んでみるのも面白いだろう。 ※中村保男は1931年東京生まれ、東大文学部英文科を卒業したのち福田恆存に師事。代表作にミステリではチェスタトン「ブラウン神父」シリーズ、SFでは『非Aの世界』『結晶世界』「宇宙をぼくの手の上に」「スポンサーから一言」などがある。
https://w.atwiki.jp/tokyomevius/pages/42.html
SF世界観、現在の課題。 東京の地理、区ごとの特徴を勉強して、資料を集める。 各組織の拠点や話の舞台も決める。 アサ編ヨル編のシナリオを煮詰める。特にボス関連。 各キャラのストーリーを決める 味付けもする。 装備データも作る。 ストーリーの順番、だいたいの長さを決める。 話数もおおよそ決定。 直接戦闘だけじゃない対立も描きたい。 ギャンブル。交渉。情報戦。電脳戦。精神戦。舌戦。 スポーツ。音楽。飲み比べ。選挙。ネット投票。 探偵や情報屋、ハッカーはもっとたくさん居ても良い。 混沌とした情勢を描くため、あるいは情報を握ることの強みを描くために。 敵側とも通じて情報交換。なかば恫喝の協力体制。 裏切り。想定内。わざとリーク。利用。 情報系キャラクターまとめ ヨル ヨル自身も基本的には後方支援系。仲介、交渉、人材配置、指揮に優れる。 過去の経験からハッキングもできる。本人曰く「"多少”腕に覚えがある」。 サマヨゥ=ヨル・ヴェナク 三企業(トライアド)御用達の占い師(オラクル)。インディアン的民族衣装の妙齢の女性。 崇峰 童人(タカミネダウト) 人類管理局のテクノマンサー。車椅子の少年。 ミスターX 主人公の上司。謎の箱。異様な人脈と情報収集能力を持つ。 「秘密は良くない」とか「嘘はつくな」ってよく言ってプレッシャーかけてくる。 神田 将臣(カンダマサオミ) このSF時代にクラシックな安楽椅子探偵をしている着流しの男。狐面。 ヨルの旧友。ネオトーキョーの神田神保町の古本屋店主。 ネットの使い手には出来ない部分を担当。たとえばプロファイリング。人間心理。歴史。 ×金田一耕助タイプ(もじゃもじゃ頭、大雑把) ×ホームズタイプ(潔癖、神経質) ○ミス・マープル、刑事コロンボタイプ(笑顔で犯人追いつめる)。 「ボブ」 薬中毒の日本男性。黒人歌手ボブ・マーリーにそっくり。けっこうな年齢。 幼少期のヨルの"少年探偵団”を潰した密告屋テクノマンサー。 そしてヨルに破滅させられ、ヨルの軍門に下る。ヨルの詐欺会社のメンバーだった。 卑屈でオドオドしてて汚くて情けないけど、腕は良い。 【Laila】(レイラ) 女性人格のAI。誰も触れられない仮想空間(マトリックス)の深層に息づく。 彼女が「この人ならアクセスしても良い」と判断した相手(ペルソナ)の前に現れ、 傍らにいる番人と戦うか否か選択を投げかける。 番人を倒して"鍵(キー)”を奪えば、話を聞いてくれる。 テレポート能力者 虐殺機関のメインの情報源。どこにでも現れ、目的のモノを浚い、消える少年。 シルヴィアとソニア 瓜二つの双子の情報屋。ロシア系。虐殺機関のサブの情報源。 有能だが、性格の違い故に(楽観主義と悲観主義) 両者の意見が食い違うことがある。よくケンカしてる。 播磨(ハリマ) ミフネ組の女ニンジャ。くのいち。"見ざる言わざる聞かざる”の"言わざる”。 ボスである御舟備前のまえ以外では喋らない。筆談。ジェスチャー。ニンニン。 "揚羽蝶”(アゲハ、"てう”、papillon、スワロウテイル、swallowtail、フォン・ディエ) 色んな組織から色んな風に呼ばれてる殺し屋。男。黄龍会所属。 どうにも似合わないその名前は、自らが昔殺した恋人のものを拝借しているらしい。 テンションが高くよく笑うが何を考えてるか判らない。糸使い。 基本は殺し屋だけど、索敵や諜報が十八番。糸電話。見えない糸の結界。哨戒兵器。 【MAXWELL】(マクスウェル) 日本政府の監視システム。しかし現在はガラサキ重工が牛耳っている。 作中最強のコンピューターだが、たぶん直接は登場させない。背後で蠢く程度。
https://w.atwiki.jp/sci-fi/pages/14.html
超能力 未来技術(コンピューター、ネットワーク、情報) サイバーパンク ワイドスクリーン・バロック ディストピア ハードSF 海洋 ミリタリー(戦争、軍事) 月 歴史(歴史改変) 時間(タイムマシン) 終末(ポストアポカリプス、最終戦争) 不老不死 地球外生命体(ファースト・コンタクト) 架空の地球生物 精神(夢、精神病) メタフィクション ホラー 未分類
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/149.html
略歴 1920年アメリカ合衆国イリノイ州ウォーキーガン生まれ。2012年没。 本名レイ・ダグラス・ブラッドベリ。 幼少期はバローズの『火星』シリーズや『ターザン』シリーズ、ボーム『オズ』シリーズに親しんだ。また、年が上がってからはヘミングウェイやスタインベックに耽溺した。 高校卒業後は、新聞販売の仕事をしながら小説家を目指して作品を書き続けた。1940年にハインラインの助力によって文芸誌に初めて短編が載るが、原稿料は得られなかった。翌1941年、ヘンリー・ハースとの共作『振り子』で作家デビューを果たすが、作品が思うように売れず、不遇の時代を過ごした。1945年、初めて作品がアンソロジーに収録される。同年短編『黒白対抗戦』が「年刊アメリカ傑作短篇集」に収録され、長年の夢を叶えた。 1950年に『火星年代記』を刊行し、一流作家としての地位を固め、また一般の評論家にも評価された。1955年、『華氏451度』を刊行した。[1] 概要 SF作家でありながら、詩人としても活躍した。SFには珍しい抒情溢れる文体から、「SFの抒情詩人」[2]と呼ばれ、星新一など、多くのSF作家に影響を与えた。 また、作家志望者に親しく接し、助言や指導を手厚く行っていたことでも有名。ブラッドベリの手助けによって作家になったものとして、ハーラン・エリスンやリチャード・マシスンなどがいる。ブラッドベリ本人がハインラインやハミルトンから助力を受けたため、その恩返しという部分が大きいが、作家志望の少年に半日ずっと付き合って話し込むという優しさの伺えるエピソードがある。[1] 代表作 『火星年代記』 早川書房 ハヤカワ文庫SF 『華氏451度』 早川書房 ハヤカワ文庫SF 「ウは宇宙船のウ」 東京創元社 創元SF文庫 参考文献 [1]SFマガジン 2012年10月号 早川書房 [2]東京創元社文庫解説総目録 東京創元社
https://w.atwiki.jp/tokyomevius/pages/29.html
ラスボスの正体案。 基本的に、派手なバトルは組織連中とのドンパチで消化しておく。 ラスボスと対峙する時点では話の展開はもう「世界の謎の解明」にシフト。 だからラスボスをものすごく強くする必要はない。 「世界を揺るがしていたのはちっぽけな個人だった」ネタなので、むしろラスボスは哀れに、醜く。 その1、預言者(オラクル)。 SF世界には付き物の、迷える人々に啓示を与える絶対者。 この作品内の社会では企業のアドバイザーみたいな立ち位置で登場させよう。 「全人類の救世主」とかじゃなく、あくまで「知る人ぞ知る便利キャラ」くらいで。 心酔/信奉する人も多い。宗教的。 狂言回しとか語り部ポジションでたびたび主人公たちを導く。 で、実はその正体は「脳内世界仮説を唱える狂人」、という…。 この場合、「狂言回しがラスボス」というパターンで驚きを演出していくことになる。 その2、浮浪者(スクワッター)。 序盤に雑魚っぽく登場させる。公園のおじさん。不潔デブ。 見聞きした情報を二束三文で売る密告屋。いろんな組織から利用され、ボラれてる。 ↑の設定とは真逆で、神秘性など無い、俗っぽい、怨恨(ルサンチマン)に溢れた人物。 これはこれで妄想を抱きやすい生い立ちである。「俺は神だ!」ってトチ狂っちゃうカンジ。 この場合、「妄想を現実にする力」で主人公たちに嫌悪感を抱かせるイベントができそう。 主人公の周囲の人間(家族とか)を寝取る妄想をしたり。エロ方面にも能力を使うw その3、ミスターX。 主人公たちの上司。毎回顔が違う依頼人。オルゴールの小箱。 主人公たちを操って脳内世界の人物たちを潰しあわせるのがラスボスの狙いであり、 ならばそれを一番成し得やすい立場はこのミスターXということになる。 この場合、終盤にむけて上司が徐々におかしくなっていき、 不審に思った主人公たちが上司の所在をつきとめて突撃すると、ラスボスと出会えるルートになる。 部屋にオルゴールの小箱が大量に落ちてる、というシーンが書きたい。 ラスボスと主人公 できたらラスボスの容姿はヨルと(部分的に)似せたい。 帽子。無精ひげ。ぼさぼさ頭。色の薄い瞳…とか。 あくまで部分的に。全体的には似ても似つかぬほど醜悪に書く。肥満、斜視、アルビノetc。 (脳内世界仮説に沿って考えるとすれば) ヨルは「夢の自分」、 ラスボスは「現実の自分」なのでちょっと似せたいのだ。 ネットゲームで喩えるなら、ゲーム内のアバターと現実の自分くらいには「どこか似ている」。 その他、雑多なネタ。 「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」という名前は、現在は亜人連合に使っているが ラスボスの唱える思想とぴったりなので、ラスボス回りの設定に使いたい。 能力名とか。あるいは「脳内世界仮説」と書いて「DHIMB」と読ませるとか。 脳に穴をあけたらその中の世界に人がいっぱい住んでいて、 その中にいる人物の脳に穴をあけたらその中に自分がいて…というループ構造を表すのにこの名が欲しい。 人体改造とエッセンス喪失の関係を「テセウスの船」で喩える。 船を修理するため木材やマストを入れ替え続けたら、元の船の材料がまったく残らなかった。 さてこの船は以前と同じ船だろうか? 違うとしたら、どの時点で違う存在になったのか?という問題。 エッセンスに関するラスボスと主人公の見解。 この世界は神の所有物だから神が好きにしてもいい、というラスボス。 自我をもった存在は誰の所有物でもない、というヨル。 「創造主 VS キャラクター」の論争、といった感じ。 ラストまでの流れ、ラスボスの存在などがかなり判りにくくなってるから スムーズなエンターテイメントになるまで何度でも書き直す。 自分の思考を整理して、わかりやすくドラマチックになるように。
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/76.html
◆E8Sf5PBLn6 024 仲間を求めて 033 太陽が呼んでいる 046 本気の嘘(前編)(後編) 058 いつか帰るところ 069 時の回廊 RPGロワ初の前後編は大人数を捌くと同時に、一気にパーティをシャッフルする意欲的な作品。作品数はまだ少ないがこれからが楽しみな書き手さん -- 名無し (2009-03-13 20 22 58) 本ロワ初の分割話を書いた書き手氏.所々の描写には良い部分もあり、原作把握もきちんとされている.が,少々冒険しすぎな節があり,展開やキャラの解釈等に独自色が強いため良い部分が損なわれている.色々と残念である. -- 名無しさん (2010-06-11 23 05 54) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/164.html
東北大SF研 長篇部会 『万物理論』 グレッグ・イーガン/山岸真 著者紹介 グレッグ・イーガン(Greg Egan) 1961年オーストラリアのパース生まれとされている。代表作に長篇では『ディアスポラ』、『万物理論』、『順列都市』など、中短篇では『しあわせの理由』、『祈りの海』など。 言わずと知れた現代SF二巨頭のひとりであり、対となるテッド・チャンとは対照的に、精力的な執筆活動で知られる。また覆面作家としても知られ、西オーストラリア大学で数学の理学士を取得したのち映画専門学校に進学するも中退、病院付きのプログラマーとして勤務していたということ以外はほとんど伝わっていない。 あまりにも顔出しをしないために、世間ではイーガンの正体に関して様々な議論がある。有名どころでは「AI説」「意識をもった脳腫瘍説」「宇宙人説」「美少女説」「複数人説」などがある。「ただの普通の白人のおっさん説」も存在するが多分嘘である。 個人的には「集合的無意識説」を推したい。全人類が潜在的にもつ「イーガン的なもの」が集まり、イーガンの作品を創り上げているのだ。人類皆イーガン。 本作『万物理論』は「SF本の雑誌」上で「SFオールタイムベスト100」の第1位に輝いたほか、「SFが読みたい!2005年版」の「ベストSF2004」第1位、2005年度星雲賞海外長編部門、2004年度SFマガジン読者賞など日本で絶大な支持を集めている。また、海外でもティプトリー賞参考作(候補作)、クルト・ラスヴィッツ賞(ドイツのSF文学賞)海外長篇部門受賞、オーリアリス賞(オーストラリアのSF・FT文学賞)長篇部門受賞など高い評価を受けている。 訳者紹介 山岸真(やまぎし まこと) 1962年新潟県長岡市生まれ。主な訳書にイーガン『万物理論』『ディアスポラ』『しあわせの理由』、コニイ『ハローサマー、グッドバイ』『パラークシの記憶』など。主な編書に「80年代SF傑作選 上・下」(小川隆と共編)「20世紀SF 1‐6」(中村融と共編)「90年代SF傑作選 上・下」「SFマガジン700 海外篇」など。 SF翻訳者には珍しい専業翻訳者で、主にグレッグ・イーガンの作品を中心に翻訳している。邦訳されたイーガン作品はほとんど全て山岸真の手によるものである(直交三部作のみ、中村融との共訳)。またアンソロジストとしても活躍しており、海外SF傑作選の編纂などを手掛けている。 主要登場人物 アンドルー・ワース 本作の主人公。科学ジャーナリストで、専門はバイオテクノロジー。 ジーナ アンドルーの彼女。浮気の末アンドルーを捨てた。ワースはジーナと心が通い合っていると思っていたが、それは幻想にすぎなかった。 ヴァイオレット・モサラ “基石”の最有力候補と目される若き天才物理学者。南アフリカ出身で、20代でアフリカ出身者初となるノーベル賞を受賞した。 非主流派ACの生物学的襲撃によって死亡。 カリン・デ・グロート モサラの秘書。苦労人。モサラの死後もアンドルーに協力してくれるいい人。 ヘンリー・バッゾ “基石”の候補とされる物理学者。しかしバッゾの理論はモサラに脆弱性を指摘されている。物語途中で暗殺された。正直あまり物語に絡んでこないので印象が薄い。 ヤスオ・ニシデ(西出康男、原文ではYasuko Nishide) “基石”の候補とされる京大出身の物理学者。日本出身。しかし病気療養中のため、会議の舞台であるステートレスには姿を見せなかった。非主流派ACであるセーラ・ナイトの手により、病死に見せかけ暗殺された。こっちはさらに物語に絡んでこないので覚えていない。 山岸さんは訳者あとがきで「間違いではないか」としていたが、私はニシデが転男性である説を考えたい。転男性であるならば、元が女性で女性名であったとしても不思議ではない。まあイーガンがうっかり間違えてしまったと解釈した方が、イーガンの人間味を感じられていい気もする。 セーラ・ナイト アンドルーと同じ科学ジャーナリストで、専門は物理学、特に宇宙論。 実は非主流派ACと内通しており、“基石”によって世界認識が変容してしまうことを防ぐため、暗躍していた。畑違いのアンドルーに万物理論ネタを奪われるまでに、執拗なほど入念に準備を重ねていた。 アキリ・クウェール 主流派ACの汎性。しかしながら、様々な集団に身を置いて活動をしている。 ローク 自閉症患者協会の広報担当幹部。無論ローク自身も自閉症者。アンドルーに自閉症の脳手術による治療法や、ラマント野、ふたつのHワードについて語った。 直接的には物語にはかかわらないが、理論的な面でかなり重要な位置を占める。 作中用語解説 無知カルト 科学を信じられない人たちの信奉する反科学宗教の総称。無知でカルトと言う通り、科学に関して暗愚な人たちの集団となっていて、文学者などの科学に疎い文化人をまつりあげて世界各地で活動している。 AC(人間宇宙論者) 謎めいた無知カルトのひとつ。 教義から察するに、物理学用語でいえば「人間原理」を信仰しているものと思われる。 Hワード この『万物理論』で展開される議論の中で、最も面白い部類の議論。小さいHワードと大きなHワードが存在し、それぞれHealthとHumanityが該当する。 まずHealth、「健康」という言葉であるが、伊藤計劃好きの多いこのサークルでは『ハーモニー』で展開された議論を思い出した人も多いのではないか。『ハーモニー』において、人々のプライバシーは「健康のために」制限されていた。伊藤計劃の得意とするところの、「ある自由を得るために、ある自由を放棄した」という現象の代表例である。(『虐殺器官』では「テロからの自由」を得るために「プライバシーの自由」を放棄している)特にこの「健康のために」という言葉が権力的に振る舞う(生政治)、という指摘はフランスの哲学者ミシェル・フーコーの主著『監獄の誕生』によるものである。(イーガンは一体何者なの?) 次にHumanity、「人間性」という言葉であるが、これはヒトラーが多用したことで有名である。本文にもあるように、論敵を「人間性が欠如している」という言葉で非難することは、相手の言論を圧殺することのみならず、論敵の過去から未来に至るすべての言動を一瞬で粉砕することが出来る最強の「権力」としてふるまう。 ちなみに、伊藤計劃は一時期までポストモダン哲学の信奉者だった(後に批判)ので、ポストモダン哲学者のひとりに数えられることもあるフーコーの著書も恐らく読んだであろうと考えられる。一方イーガンが読んだかどうかは、定かではない。 自発的自閉症者協会 まず、医学的には「自閉症」という診断名は存在せず、「広汎性発達障害」の中に「自閉性障害」という診断名がある。具体的な診断方法は省略するが、あくまで症状から診断される病気であり、病理学的検査によって診断される病気ではない。この「広汎性発達障害」のなかでも、全般的に知的な能力や言語に遅れが見られない場合、医学的には「アスペルガー症候群」と診断される。[1] ここで、ロークの語る部分的自閉症者の特徴を挙げると、「人間関係の構築に障害がある」「知的能力にはなんら影響がない」というものなので、作中の「自閉症」は現実の医学的にはアスペルガー症候群に近いと言えるだろう。 また、作中では自閉症がラマント野の損傷によって発症するとされているが、これも現実における自閉症・アスペルガー症候群の原因とは異なる。自閉症の発症率は、日本人では一万人当たり96.7~161.3人であるとの報告があり、おおよそ1%前後の発症率とされ、それほどまれな障害ではない。自閉症の発症原因としては遺伝的要因との関連が深いと考えられている。発症に関しては複数の遺伝子が関係している可能性があり、また胎児期から生後2年ほどの間のウイルス感染などもひとつの要因とされている(これは作中でも言及されている)など、単純には捉えられない。現在のところ、自閉症と特定部位の脳損傷との明確な局所的関連は認められていないものの、偏桃体を中心とした神経ネットワークと小脳の障害を伴うとされる。[2][3] 話を作中に戻して、自発的自閉症者協会では、部分的自閉症の治療方法として、既存の自家組織移植によるラマント野の治療以外に、新たにラマント野の完全切除によって部分的自閉症を完全な自閉症に「治療」することを法律によって規定しようという政治的主張を行っている。エピローグでの描写から、“基石”の発生後はラマント野の切除手術が広く行われているようだ。 各種ソフトウェア 脳内に「インストール」された各種支援ツールで、必要に応じて利用される。メモリは体内に存在し、へそに端子が露出している。 シジフォス 情報収集・管理・同期が出来る総合情報管理システム。 元ネタはギリシャ神話に登場する人物、シーシュポスから。シーシュポスは都市コリントスの建設者で、後に神を二度欺いた罪で永久に岩を山頂に運ぶ労役を課せられた。 ヘルメス 多分シジフォスの下位システムであると考えられる。仲介・パッチ処理を担当か。 元ネタはギリシャ神話に登場する神。オリュンポス十二神のひとりにして、ゼウスの使い。盗人、賭博、商人、交通、体育、音楽など多くの事柄を象徴する神でもある。 目撃者 視覚情報の記録・分析のほか、AR的な機能を備えている。 カスパー 簡単な模擬人格AI。 元ネタは新約聖書に登場する東方の三博士のひとり、カスパールだと思われる。『新世紀エヴァンゲリオン』にも開発者赤城ナオコ博士の「女」としての人格を模した人格AIとして、同じく東方の三博士を元ネタとするCasperが登場するが、関連は不明。『新世紀エヴァンゲリオン』のテレビ放映が1995年、『万物理論』の原著が1995年末、邦訳が2004年なので関連性は限りなく低いと考えられる。 あるいは、19世紀にドイツで発見された正体不明の孤児カスパー・ハウザーが元ネタか。16歳で保護されるまで地下牢に幽閉されており、人間的な行動が出来なかったとされている。教育によって言葉を話せるようになり、自身の過去を語ろうとした矢先、何者かに暗殺された。そのため芸術作品などでしばしば題材にとられる。(これも教育心理学・発達心理学などの心理学分野では有名な話) ステートレス バイオテクノロジー企業の社員が違法に持ち出した技術を基に作られた太平洋の人工島。この島では科学技術に関する特許がすべて無効になるため、日本を筆頭に先進諸国から貿易・出入国に関する厳しい制限がかけられている。 ステートレスはサンゴ礁を基礎とした人工島であり、水素合成細菌が生じる水素で浮力を得ている。第二章で明かされるこのステートレスの構造は、最終盤で大きな意味をもつ。大量にばらまいた技術的なネタのうちで、ちゃんと伏線として活用される数少ない例のひとつ。 ディストレス 世界中で患者が急増している精神病。あまりにも発症者の増え方が激しいので感染性なのではないかと考えられているが、人口に対して平等に感染者が発生(世界中どこでも人口に対する患者の比率が同じ)するので、感染症だとも考えにくい。 その正体は万物理論に触れてしまったことで起こる唯我論的狂気であり、万物理論の理解に先立って発生していたものだった。 『万物理論』の原題は”Distress”であり、意味としては(1)大きな不幸、不安、苦痛を感じること(2)貧困、飢餓に苦しむこと(3)遭難 がある。(Oxford Advanced Learner’s Dictionaryより、下村訳)これらの意味を複合させたものがもっともらしく感じられる。 物理学的解説 万物理論(Theory of Everything、TOE) 万物理論とは、本文にも登場したように「すべての物理現象をその式のみで記述する究極の物理法則」のことである。 現代の物理学では、この世のすべての「力」は重力、電磁力、弱い力(原子核を崩壊させる力)、強い力(原子核を結び付ける力)の4つで表されるとしている。この4つの力は、宇宙が始まった際(ビッグバン、超高温・超高圧)はすべて同じで区別出来なかったはずだと考えられていて、この統合された1つの力の作用を表す法則を万物理論と呼んでいる。 現在、電磁力と弱い力を統合した電弱力を記述する理論(統一理論、またはワインバーグ=サラム理論)は既に完成しており、電弱力と強い力を統合する大統一理論の整備が進んでいる。 人間原理 「この宇宙に私たち人間がいて、この宇宙が人間に理解出来るものであるのは、すべて私たちがそう観測して理解出来るからに過ぎない」という仮説のこと。はっきり言ってしまうと、科学的反証性が確保出来ないため、科学の扱う問題ではない。そういう面では非常に非科学的な言説である。 哲学者カール・ポパーによれば、科学の条件とは「反証可能性が確保されていること」である。反証可能性とは、ある科学的仮説に対して、それを否定するような現象が存在する場合、仮説は否定されることである。すなわち、科学とは、それによって説明出来ることと出来ないことを明確にするプロセスを指す。なお、これは自然科学だけでなく、社会科学や人文科学にも適用される。[4] テンソル テンソルは相対論の計算などで頻出するのだが、私自身正直よく分からないまま天下り式に使っているという部分が大きいのであまり詳しく解説することが出来ない。平たく言うと、スカラーをベクトルに拡張したように、ベクトルをさらに拡張したものである。詳しい解説は是非数学科の人にお願いしたい。 考察 私の予想だが、アンドルーは自閉症なのではないかと考えている。嘘が下手であることと、“基石”になったことがその論拠だ。これに関しては、SF研のみなさんの意見を聞きたい。(正直、自閉症でないとすると、わざわざ自閉症患者を登場させて自閉症に関して語らせたことの必要性が薄れる)また上述の通り、エピローグにおける描写でラマント野の切除手術が一般化していることを考えると、アンドルー自身も自閉症であると考えた方が自然だ。 所感 最高。これこそSFにおける最高傑作のひとつである。 600頁に及ぶ物語の中で、イーガンはいくつもの魅力的なアイデアを提示して読者を魅了し、また困惑させる。少なくとも長篇を7本は書けそうなアイデア(ジェンダー、死後復活を利用したミステリ、バイオテクノロジー【遺伝子組み換え植物の存在】、バイオメカトロニクス【遺伝子組み換えによる身体改造】、Hワード、ノートパッドなどの現在の技術を予知したかのようなガジェット、無知カルト、ディストレスのパンデミック)を贅沢にも1本の長篇に押し込むその重厚さは、流石イーガンといったところ。最後の大仕掛けも、物理理論と情報理論の結合による万物理論の完成とは、これまた時代を先取るようなイーガンの圧倒的な思考の成せるアイデアだ。 またイーガンの中・短篇を読んだことがある人は、それらの作品の内容を思い出すことがあったのではないか。代表例として、未来の倫理観・幸福感を扱った名作『しあわせの理由』が挙げられるだろう。『万物理論』以前に発表されたイーガン作品に頭をのぞかせていた多くの要素がこの作品で集大成を迎えたということになろだろう。 この『万物理論』のテーマとして、新しい科学的発見の発表による社会の変容と、それに対するイーガンのものの見方が挙げられるだろう。『万物理論』は、今やSFにおける科学技術の代名詞ともいえる存在となったイーガンの、科学に対する姿勢が明確に表されたまぎれもない傑作だ。私自身、「科学的な新発見なんていつかは解明されるものであるし、そもそも科学的な法則はビッグバン以前から規定されたものであるし、それによって価値観が揺らぐ方がおかしい」という感覚なので、本作を読んでいて文中における無知カルトに対して批判的な言及には共感を覚えた。 また自閉症をSFガジェットに用いるSFとして、フィリップ・K・ディックの『火星のタイム・スリップ』を思い出した。近年だと宮内悠介の『エクソダス症候群』も精神病を扱ったSFであり、精神病をテーマとしたSFは昔から人気があるのかもしれない。(これは精神病を従来の一般文芸や純文学では扱いづらいというのも背景にあるのかもしれない) 付録 イーガンの他作品と、他作家のハードSF作品を紹介する。 『しあわせの理由』(イーガン、山岸真訳、ハヤカワ文庫SF) SFマガジン700号記念の人気投票において、海外短編部門第2位に輝いた名作『しあわせの理由』を表題とした、イーガンの入門的作.品集。 個人的には、イーガンらしくないとされる『愛撫』、イーガンお得意の科学技術を全面に押し出した科学探偵もの『チェルノブイリの聖母』がおすすめ。(無論表題作はいちばんのおすすめ) 「無常の月 ラリイ・ニーヴン傑作選」(ニーヴン、小隅黎・伊藤典夫訳、ハヤカワ文庫SF) ヒューゴー賞受賞作『無常の月』『中性子星』『ホール・マン』『太陽系周辺空域』を含む、文字通りニーヴンの傑作選。基本的には宇宙を舞台とした懐かしい雰囲気の作品が多いが、宇宙に関する描写は科学知識を基にした、なるべく正確なものになっている。 『星を継ぐもの』(ジェイムズ・P・ホーガン、池央耿訳、創元SF文庫) SFミステリの金字塔。月で発見された人の遺体は、なんと5万年前のものだった。豊富な科学的発想とミステリ由来の強固な論理展開によって明らかになっていく物語は必読。はじめ1/3は布石パートなので若干読み進めるのが大変だが、のこり2/3は息つく暇もない魅惑の世界が広がっている。はじめ1/3だけ何とか頑張ってほしい。 「老ヴォールの惑星」(小川一水、ハヤカワ文庫JA) 現代日本におけるハードSFといったらこの人。星雲賞受賞作『老ヴォールの惑星』を筆頭に、一水の特色が結晶した『ギャルナフカの迷宮』や人気の高い『漂った男』、時代を先取りした拡張現実ものの『幸せになる箱庭』の4作が収録されている。一水の作品の中ではかなり読みやすい上、特色も出ていて非常に面白い。一水作品の特色は「科学知識を身につけた人たちが、困難な状況に対して希望を捨てずに立ち向かう」というものだ。一水の作品にバッドエンドはほとんど存在しないので、安心して読むことが出来る。 参考文献 [1]シードブック教育心理学 本郷一夫・八木成和編著 建帛社 [2]心理学 第4版 鹿取廣人・杉本敏夫・鳥井修晃編 東京大学出版会 [3]自閉症スペクトラムとは 笹沼澄子編 医学書院 [4]科学哲学への招待 野家啓一 ちくま学芸文庫 [5]『万物理論』レジュメ ちゃあしう 東北大学SF研究会 下村思游
https://w.atwiki.jp/g-search/pages/106.html
世界観>SF ガンダムネットワークオペレーション3 【紹介】2010年3月1日正式サービススタート!●オンラインゲーム初!サイコガンダムフィギュア形USBメモリパッケージで登場!“宇宙世紀”と呼ばれるガンダムの歴史に自分だけの部隊を作り上げて実時間の流れの中で迫力ある戦闘を体験できるPCオンラインゲームです。ログオフ時も自動で戦闘が進行するため、忙しい方も短時間で楽しめます。3Dモードと2Dモードがあり2Dモードであれば必要とするPCのマシンスペックも低く、お仕事でお使いのノートPCなどでも十分遊べます。【攻略サイト】
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/151.html
東北大学SF研究会の歴史 まだまだ不明確なことが多いのですが、現在分かっている範囲で活動の歴史をまとめていきたいと思います。 1976年 第一次東北大学SF研究会発足。しかし部員が集まらず、いつしか部室はゲバ棒&ヘルメット置き場になっていた。 1978年 第二次東北大学SF研究会発足。以降は途切れることなく現在に至る。 19??年 現在の川内駅前の広場に当たる場所にあったサークル棟に入居。 19??年 部室が川内仮サークル棟G-15に移動。当時は完成したばかりで、キャンパス内で一番新しい建物であった。 1987年 川内仮サークル棟G棟が放火される。現在部室の天井に付いている黒い汚れはこの時の火災の煤の名残。なお、のちにその被害を隠すために壁を塗る作業に駆り出された者たちの中に円城塔がいた模様。 1991年 円城塔、勝山海百合が入部。『Divergence』終刊。 2002年 第二次東北大SF研が廃部の危機に瀕する。部員の欲しいSF研と部室の欲しい推理研の思惑が一致し、合併して東北大学SF・推理小説研究会となる。 2017年 機関誌「九龍」第一号刊行。 2018年 第二次東北大学SF研究会創部40周年。機関誌「九龍」第二号刊行。冬コミにて、創設以来はじめてコミケサークル参加を果たす。 2019年 世界初のSFVtuber、卜部理玲がデビュー。 2022年 機関紙「氷礫」創刊。2024年4月現在、既刊は4刊。